~遺産分割の禁止~

「遺産分割の禁止」とは、一定期間において遺産分割を禁止することをいい、遺産分割が禁止されている期間中は、仮に遺産分割協議によって遺産分割が行われても、原則として無効となります。

相続開始直後から遺産分割協議を行うことが不都合なケースには「相続人の中に未成年者がいる場合」「相続開始後遺産分割までの間に冷却期間を置きたい場合」「相続財産や相続人について慎重に調査する必要がある場合」などが挙げられます。

「相続人の中に未成年者がいる場合」では、親権者は未成年者のために特別代理人を選任することを、家庭裁判所に請求しなければなりません。

そのため、未成年者があと少しで成人するという場合などには、一定期間遺産分割を禁止して、特別代理人の選任を回避しようとするケースがあります。

「相続開始後遺産分割までの間に冷却期間を置きたい場合」では、相続開始直後は、親族間で亡くなった被相続人や相続財産への思い入れが強くなりすぎて、冷静に遺産分割協議を行うことができないおそれがあります。

そのため、被相続人の意思または相続人同士の自発的な話し合いにより、一定の冷却期間を置く意味で、遺産分割が禁止される例も見られます。

「相続財産や相続人について慎重に調査する必要がある場合」では、相続財産の規模が大きいケース、家族関係が複雑な場合など、遺産分割の漏れをなし、遺産分割を有効に成立させるために相続財産や相続人について慎重に調査する必要があるケースでは、調査期間を設ける意味で、遺産分割が禁止されることがあります。

遺産分割を禁止するための方法は、「遺言」「相続人間の合意」「家庭裁判所の手続き」の3つがあります。

遺言による禁止では、遺言者は、遺言によって遺産分割を禁止することができ、遺言により遺産分割を禁止する場合、禁止期間は最大で相続開始のときから5年です。

相続人間の合意による禁止では、分割をしない方が共同相続人ら全体にとって利益となると相続人全員の合意がある場合にも、遺産分割を禁止することができます。

家庭裁判所による禁止では、共同相続人は、遺産分割協議が調わないとき、または遺産分割協議をすることができないときは、遺産分割を家庭裁判所に請求することができ、直ちに遺産分割をすべきでない特別の事由があると判断される場合には、家庭裁判所は期間を定めて、遺産分割を禁止することができます。

特別な事由に該当するのは、相続人の資格や遺産の範囲などに争いがあり、即座に分割することが適当でないと考えられる場合です。

遺産分割の禁止期間における注意点として、相続税申告は期限どおり行う必要があると言うことです。

相続税申告期限は、遺産分割が禁止されている場合でも延長されることはありませので、法定相続分に従って遺産分割をしたと仮定して、相続税の仮申告を行う必要があります。

遺産分割の禁止が必要とされるケースか、否かの判断が難しい場合など相続の分野に詳しい当事務所にぜひご相談ください。