最終順位の相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、管理義務はどうなるのでしょうか。
このような状況では、相続財産は国に帰属することになりますが、それまでの間に管理義務を負う者は存在しないと考えられます。
管理義務は相続人に課せられるものであり、相続人がいなければ管理義務も消滅するからです。
そのため、実務上は、相続人全員が相続放棄した場合には、裁判所に対して遺産管理人の選任を申し立てることができます。
遺産管理人は、裁判所によって選任された者であり、相続財産の管理や処分を行うことができますが、遺産管理人の選任には時間や費用がかかりますし、選任された者も無報酬であることが多いため、積極的に応じる者は少ないという問題があります。
相続放棄は、相続人が相続財産に関する権利と義務を放棄することを意味しますが、相続人がいなくなるわけではありません。
したがって、相続人全員が相続放棄した場合でも、相続財産の管理責任は誰かに帰属しなければなりません。
相続放棄をした者が、相続放棄前に相続財産を管理していた場合は、その者に対して不法行為の責任が問われる可能性があります。
その場合、管理義務は法律上ではなく、不法行為の原則に基づいて発生すると考えられます。
管理責任を負うのは誰かという問題は、規定がなく法律上の明確な解決策がないというのが現状です。
相続人全員が相続放棄した場合の管理責任については、法制度の整備が必要であると言えるでしょう。